年金の金額っていくら?老齢基礎年金に絞ってFPが徹底解説

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お金の悩み

一口に年金と申しましても、様々あります。

国の年金制度だけでも、国民年金や厚生年金保険、公務員の方を対象にした退職等年金などがあります。

他に、企業年金や個人年金保険などがあります。

【今回の記事でわかること】

  • 年金金額を、誰もが受け取ることできる老齢基礎年金に絞って
  • 老齢基礎年金の繰下げ
  • 繰下げた場合には選ぶことも
  • 年金の受け取り開始を遅らせる
  • 繰下げがあれば、その逆の繰上げも
  • 繰上げについて2022年の改正
この記事を書いた人
大泉 稔(おおいずみ みのる)

富山県生まれ。明星大学日本文化学部言語文化学科卒業。
公務員、タクシー会社事故係、社会保険庁、独立系FP会社役員、保険代理店取締役を経て、現在に至る。
保有資格は1級FP技能士、1種証券外務員、貸金業取扱主任者。
二次相続相談や執筆に力を入れています。

年金金額を、誰もが受け取ることできる老齢基礎年金に絞って

本稿では、日本国民なら65歳になれば、滞納などの例外を除き、原則としてどなたでも受け取ることになる老齢基礎年金の年金金額に絞って見ていくことにします。

老齢基礎年金は国民年金保険料が原資です。

国民年金保険料は20歳~60歳までの40年間、払います。

40年間、1か月も欠かすことなく、フルに国民年金保険料を納め続けた方や、サラリーマン等で、厚生年金保険料を天引きされ続けた方は、780,900円老齢基礎年金を受け取ることができます。

780,900円という金額は2021年度の金額で、物価などの水準に合わせ、毎年、見直しをすることになっています。

年金ですから、780,900円が、1年間の受け取り額と言うことになります。

2021年度中に65歳になられる方を想定してみましょう。

1976年度に20歳になり、2016年度に60歳になった方たちです。

国民年金保険料は20歳から60歳までの40年間、納めるのが原則です。

20歳から60歳までの間、サラリーマンの経験が無く、ずっと自営業者として国民年金保険料を納め続けた方がいたとしましょう。

1976年度に20歳なった方が、以後、40年間に納めた国民年金保険料の合計は4,947,600円にもなります。

自営業者が納めてきた国民年金保険料の額は、年度によって異なりますが、納める方、全員、一律です。

ですので、過去の年度ごとの国民年金保険料を追うことができれば、納めてきた国民年金保険料の額が分かります。

4,947,600円÷780,900円=6.335≒7年

つまり、老齢基礎年金を7年も受け取れば「元が取れる」計算になります。

しかし、実は老齢基礎年金は国民年金保険料だけで成り立っているわけではありません。

老齢基礎年金には税金も投入されています。

ですので、40年間、納め続けてきた国民年金保険料を、65歳から受け取る老齢基礎年金で「元が取れる」のかを計算する場合、分母を40年間の「国民年金保険料+税金」としなくてはなりません。

しかし、40年間に納めてきたであろう税金を、どうやって知るのでしょうか?

先述の通り、国民年金保険料は年度ごとに異なりますが、自営業者として納める額は、全員一律です。

税金は国民年金保険料とは異なり、一律ではありません。

所得によって税率すらも異なります。

また税金のうちの、どの位、老齢基礎年金に投入されてきたのかも、どのように知ることができるのでしょうか?

国民年金は実は、2008年度まで、その3分の1が、また同じく2009年度以後、その2分の1が、税金が投入されていると言われています。

そこで、先述の納めてきた国民年金保険料に税金を加味することにします。

2008年度までの国民年金保険料の額に1.33を掛けます。

2009年度以後の国民年金保険料の額に1.50を掛けます。

すると、先述の1976年度に20歳になった方が、以後、40年間に納めた「国民年金保険料+税金」の合計は6,795,814円となります。

6,795,814円÷780,900円=8.7025≒9年

2021年度の老齢基礎年金の額780,900円を基にすると、老齢基礎年金は、およそ9年間、受け取れば「国民年金保険料+税金」の元が取れる計算となります。

老齢基礎年金の繰下げ

老齢基礎年金は65歳から受け取ることができます。この受け取り始める年齢を66歳以後に、遅らせることを繰下げと言います。

2021年までは、66歳から1か月単位、最長70歳まで繰下げが可能です。

また、2022年以後に70歳になる方については、同じく66歳から1か月単位、最長75歳まで繰下げができます。

なお、65歳の間は、繰下げが出来ません。

例えば、老齢基礎年金の受け取り始める時期を65歳6か月とすることは出来ないのです。

では、老齢基礎年金の繰下げを行うことで、どのようなメリットがあるのでしょうか?

そもそも繰下げは、老齢基礎年金の受け取り始める年齢を遅らせるので、「老齢基礎年金がゼロの期間」が生じます。

ですが、受け取り始める年齢を1か月遅らせるごとに、老齢基礎年金の額に、0.7%のプラスアルファが付きます。

そして、この付いたプラスアルファの額は、老齢基礎年金を受け取っている間、ずっと変わりません。

ですから、長生きをすればするほど、得をするわけですね。

例えば、老齢基礎年金の年金受け取り始める年齢を68歳としましょう。

ですので、65歳から67歳になるまでの間、老齢基礎年金の受け取り額はゼロ、つまり「年金ゼロの期間」が生じるのです。

ですが、受け取り始める年齢を遅らせる分、68歳から受け取る老齢基礎年金の額には、25.2%のプラスアルファの額が付きます。

ですので、先述の老齢基礎年金の額780,900円を基にプラスアルファの額を計算すると

780,900円×125.2%=977,786.6≒977,700円
977,700円―780,900円=196,800円

プラスアルファの額は196,800円となりました。

ところで、先ほど、68歳まで繰下げる場合、65歳から67歳になるまでの間、「年金ゼロの期間」が生じると述べました。

では、プラスアルファの額は「年金ゼロの期間」をリカバリーすることができるのでしょうか?

老齢基礎年金の額は、毎年、見直されるのが原則ですが、ここでは2021年度の老齢基礎年金の額が、今後も変わらないという前提で計算します。

65歳から67歳までの3年間が「年金ゼロの期間」ですから、780,900円×3年間=2,342,700円を「受け取らない」ということになります。

この「受け取らない」2,342,700円を、繰下げによって得られるプラスアルファの196,800円で割ります。

2,342,700円÷196,800円=11.90・・・≒12

と言うことで、「ゼロの期間」を「プラスアルファの額」で取り返そうとする場合、68歳から12年の時間を要します。

なお、繰下げによって生じた「年金ゼロの期間」を、「繰下げによるプラスアルファ」で元を取る場合、何歳に繰下げようとも、要する時間は12年で変わりありません。

ちなみに、70歳まで繰下げを行うと、プラスアルファは42%になります。

また、75歳まで繰下げを行うと、プラスアルファは、なんと84%にもなります。

84%のプラスアルファと言うと、
780,900円×184%=1,436,856≒1,436,900円。

プラスアルファの額は656,000円にもなります。

しかし、このプラスアルファの額を現実のものとするためには、「年金ゼロ」の期間が75歳までの10年間あること。

そして、10年におよぶ「年金ゼロ」を取り返すには、75歳から12年を要する、つまり87歳までの時間がかかることも、併せて、知っておかなくてはなりません。

繰下げた場合には選ぶことができます

ところで、老齢基礎年金の受け取り始めの年齢を遅らせる場合、「繰下げ」の他に、実は、「もう一つの選択肢」があります。

それは、繰下げによるプラスアルファの額は付きませんが、「年金ゼロの期間」の年金を、まとめて受け取るのです。

例えば、先ほどと同じく老齢基礎年金の受け取り始めの年齢を68歳としましょう。

65歳から67歳までの3年間「年金ゼロ」なのも同じです。

68歳で繰下げを選択しません・・・ですので、68歳から受け取りを始める老齢基礎年金の額は65歳からのそれと同じく、プラスアルファの額が無い780,900円となります。

そして、65歳から67歳までの間、もらっていなかった3年分、つまり「年金ゼロ」の期間分の老齢基礎年金を、68歳の時に「まとめて」受け取るのです。

「まとめて」受け取る額は780,900円×3年間=2,342,700です。

「もう一つの選択肢」とは、老齢基礎年金の受け取り始めの時に繰下げを行わず、過去にさかのぼって、「まとめて」受け取るということです。

なお、68歳を例として採りあげましたが、「もう一つの選択肢」も、「繰下げ」と同じく、やはり70歳まで、2022年以後に70歳になる方については、75歳まで、行うことができます。

65歳で老齢基礎年金の受け取りを行わず、受け取り始めの年齢を遅らせた場合、2つの選択肢があります。

一つは「繰下げ」を行うことで、「年金ゼロ」の期間を、プラスアルファの額によって、時間を掛けて取り返していくのか。

「もう一つの選択肢」は繰下げを行わずに、老齢基礎年金の受け取りと同時に、「年金ゼロ」の期間の分を「まとめて」取り返すのか、いずれかを選ぶことができます。

年金の受け取り開始を遅らせる…受け取り始める前に亡くなってしまったら

老齢基礎年金の受け取り始めを遅らせる場合、もし、受け取り始める前に亡くなってしまった場合には、どのようになるのでしょうか?

例えば、先ほどから繰り返し例に挙げている、老齢基礎年金の受け取り始めを68歳とする場合に於いて、67歳で亡くなってしまうような時です。

こういう時には、65歳から受け取り始めていたであろう老齢基礎年金の額を、亡くなった67歳までの分を、つまり3年分の老齢基礎年金をまとめて、遺族に支払わられます。

この遺族に支払われる年金のことを未支給年金と言います。

65歳になり、老齢基礎年金を受け取ることができるものの、実際には受け取っていなかったわけですから、文字通り「未支給」年金ですね。

繰下げがあれば、その逆の繰上げもあります

さて、老齢基礎年金には受け取り始める年齢を遅らせる繰下げがあれば、その逆もあります。

つまり、老齢基礎年金の受け取り始めの年齢を早くする繰上げです。

65歳から受け取ることができる老齢基礎年金は、60歳まで、1か月単位で繰上げが可能です。

ただし、受け取り始める年齢を早める分、その受け取る年金額は一部カットされます。

受け取り始める年齢を遅くする分、プラスアルファの付く繰下げとは、とことん逆と言えそうですね。

では、老齢基礎年金の受け取り始めの年齢を繰り上げた場合の一部カットとは、いかほどなのでしょうか?

繰上げ1か月に付き0.5%です。

もし、63歳から、老齢基礎年金を繰上げて受け取る場合、

780,900円×(1-0.5%×2年間×12か月)=687,192≒687,200円
780,900円―687,200円=93,700円

つまり、一部カットの額は93,700円と言うことで、65歳から受け取る老齢基礎年金の額に比べると、12%のカットと言うことになります。

ところで、老齢基礎年金の繰下げが話題になると、「65歳になると、(一部カットの額が無くなり)元々の年金額に戻るらしい」等と、都合の良い誤解をしていらっしゃる方に、お会いします。

しかし、「65歳になると、一部カットの額が無くなり、元々の年金額に戻る」というような、そんな都合の良いことはあり得ません。

一部カットの額は老齢基礎年金を受け取っている間、つまり亡くなるまでの間、ずっと続くのです。

老齢基礎年金の繰上げは、一部カットの額があるとはいえ、本来なら65歳から受け取り始める老齢基礎年金を、早くもらい始めるわけですから、その分、お得とも言えそうです。

では、そのお得は、いつまでも続くのでしょうか?

先に例を挙げた63歳で、老齢基礎年金を繰上げた場合を、以下の計算式を基に考えてみましょう。

2年÷12%×100=16.6666≒17年。

2年は65歳から63歳に繰上げた年数です。

12%は繰上げによる一部カットの額です。

63歳から16年経つまでの、79歳までの間に亡くなれば、「老齢基礎年金を63歳から繰上げて良かった」と言うことになります。

が、63歳に繰上げた老齢基礎年金を17年以上、経った、80歳以後も受け取るとなると、「繰上げずに、65歳から受け取っていれば良かった」と言うことになりそうです。

なお、この計算は繰上げを、どの年齢で行っても同じになります。

つまり、繰上げてから16年以内に亡くなるか、17年以上、長生きするのかが、繰上げの損得の分かれ目と言うことになります。

繰上げについて2022年の改正

ところで、この老齢基礎年金の繰上げについても、2022年に改正があります。

先ほど、繰上げによる一部カットは、繰上げ1か月に付き0.5%と述べましたが、2022年以後の繰上げに付きましては、繰上げによる一部カットは、繰上げ1か月に付き0.4%になります。

先ほどから、例に挙げている老齢基礎年金を63歳で、繰上げによる一部カットの額を計算してみましょう。

780,900円×(1-0.4%×2年間×12か月)=705933.6≒705,900円
780,900円―705,900円=75,000円

2022年以後の繰上げによる一部カットの額は、75,000円、9.6%の一部カットとなりました。

先ほどと同じく、老齢基礎年金を「63歳で繰上げて良かった」のか、「65歳から受け取って良かった」のかの計算も行ってみましょう。

2年÷9.6%×100=20.8333≒21年。

2年は65歳から63歳に繰上げた年数です。

9.6%は繰上げによる一部カットの額です。

63歳から20年経つまでの、83歳までの間に亡くなれば、「老齢基礎年金を63歳から繰上げて良かった」と言うことになります。

が、63歳に繰上げた老齢基礎年金を21年以上、経った、84歳以後も受け取るとなると、「繰上げずに、65歳から受け取っていれば良かった」と言うことになりそうです。

なお、この計算は2022年以後なら、繰上げを、どの年齢で行っても同じになります。

つまり、繰上げてから20年以内に亡くなるか、21年以上、長生きするのかが、繰上げの損得の分かれ目と言うことになります。

おわりに

いかがでしたでしょうか?

年金金額というテーマで、老齢基礎年金に絞って、述べさせていただきました。

払い込んできた国民年金保険料に対して、老齢基礎年金は、何年、受け取れば元が取れるのかに始まりました。

そして、老齢基礎年金を繰上げた場合、「年金ゼロ」の期間を、プラスアルファの額で取り返すには何年かかるのか、逆に繰上げについては、損得の分かれ目の計算について、それぞれ、述べました。

読者の方の老齢基礎年金の受け取り方について、参考になれば幸いです。