相続できる人の優先順位ってあるの?家族でもめないようにするためにはどうすれば良いの?

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お金の悩み

相続できる人の優先順位については、民法でその順位が定められており、この定められた相続人のことを法定相続人と言います。

「法定」という言葉を聞くと、「自動的に法定相続の割合で相続する事になる」「法定相続人以外の人が相続をすることはできない」と誤解される方が中にはおられますが、亡くなられた方が遺言書を作成すれば、法定相続人以外への相続や、法定相続割合とは異なる割合で、遺産を渡すことは可能です。

相続対策を考えるうえで、遺言書を準備するのであれば、必ずしも法定相続分の通りにする必要はないという事は押さえておくべき大切な点です。

そうは言っても、遺言書を書くうえで、法定相続人の範囲と順位、また法定相続分は理解しおかないと後々のトラブルになってもいけません。

法定相続人の範囲と法定相続分は理解したうえで、遺言書を書くことが重要と言えます。

【今回の記事でわかること】

  • 法定相続人の範囲と相続順位
  • 法定相続人が相続する割合
  • 法定相続分に対する扱いの難しい点
  • もめないための手段「遺言書」と書くことの難しさ
  • 相続でトラブルとならないようにするために
この記事を書いた人
森拓哉
保有資格:一級ファイナンシャルプランニング技能士 CFP 宅地建物取引士
広島大学卒業後に12年間 外資系の金融機関で勤務。
ニューヨーク派遣など充実したサラリーマン生活の一方で、大企業が主導する販売戦略に疑問を感じて退職独立。
独立後に思いもよらない両親の相続の時には感謝と悔いの入り混じる複雑な思いを経験する。
たった一度の相続は悔いのないよう過ごしていただきたい。
金銭的におとくな手法を伝える事が役割ではなく、おうちのお金や今後の暮らしの「どうしよう?」という気持ちを、ご本人、ご家族が納得できる「最善の方法」を見つけるまで徹底的にサポートしている。

1, 法定相続人の範囲と相続順位

まず亡くなられた方の配偶者はどのような場合であっても必ず法定相続人になります。

籍を入れていない、内縁の夫婦関係の場合は、法定相続人ではありません。

配偶者以外の相続人がどのように決まるかは、亡くなられた方がどのような家族構成かにより、相続順位が高い人が法定相続人になります。

第1順位:子ども
第2順位:親
第3順位:兄弟姉妹

1)法定相続の第1順位:子ども

法定相続人の第1順位は子どもになります。

亡くなられた方に親や兄弟姉妹がいたとしても、その方に子どもがいらっしゃれば、親や兄弟姉妹は法定相続人になることはできません。

子どもがいるけれども、もし子どものほうがが先に亡くなっている場合は、子どもの子ども、つまり孫が子どもの代わりに相続人となります。

このことを代襲相続と言います。

相続対策として、先祖代々、一族で守ってきた土地等、親の存命中に子供に承継するケースがありますが、万一子どもが親より先に亡くなってしまった場合は、配偶者や孫がいれば、親が相続人になることはありません。

一族の大切な資産を生前に子どもに託す場合は、その先々の万が一も想定しておきたいものです。

2)法定相続の第2順位:親

法定相続人の第2順位は親になります。

未婚の方が若くして亡くなられたり、ご夫婦・子供のいないご家庭でご主人が若くして亡くなられる場合などが、相続人が親となるケースになってきます。

未婚の方が若くして亡くなられた場合、親が相続をするというのはイメージしやすいのですが、子どものいないご家庭でご主人が若くして急逝された場合、残された奥様と義父母が法定相続人となり、相続を円滑に進めるうえで、「ぎこちなさ」が伴いがちです。

ご主人の遺産が奥様の生活に大きな影響を与えれば与えるほど、ぎこちないものになりがちです。

例えばですが、結婚してすぐにマイホームを建てた後、ご主人が急逝すると、マイホームをめぐって奥様と義父母がどうするか話し合いをすることになります。

ご主人様不在での義父母との話し合いは、何ともやりづらい感じがしますね。

もしマイホームを建てた土地の名義が義父母のものだったり、マイホーム取得のために義父母から援助を受けていたりすると、ますますぎこちないものになるのは想像しやすいのではないでしょうか。

3)法定相続の第3順位:兄弟姉妹

法定相続人の第3順位は兄弟姉妹になります。

子供もいない、親もいない場合に、兄弟姉妹がいれば、兄弟姉妹が法定相続人になります。

生涯独身で過ごされた方、子どものいないご夫婦が亡くなられたケースなどが、法定相続人が兄弟姉妹になりうるケースです。

兄弟姉妹はいるものの、万一先に亡くなっている場合、代襲相続により兄弟姉妹の子ども、つまり甥っ子や姪っ子も相続人となってきます。

おじさん、おばさん、甥っ子、姪っ子の親戚関係で、日常的に生活の助け合いや、介護のお世話をするということは、日常よくある話というわけでもないでしょう。

仮に関係が希薄であっても、兄弟姉妹が先に亡くなっている場合、甥っ子、姪っ子が故人の法定相続人になることになります。

本当に、法定相続人に相続をさせることだけが、亡くなった人にとって良いことなのかどうかは、亡くなる前の生前にしっかりと判断しておくことが大切と言えるのではないでしょうか。

前述のように、遺言書を作成すれば、法定相続人以外への相続も可能です。

2, 法定相続人が相続する割合

民法では法定相続人がどのくれいの割合で相続するのか、取得する分の目安が定められています。

この遺産取得の割合のことを、法定相続分と言います。

1)法定相続人に応じた割合

法定相続人が配偶者のみの場合、配偶者の法定相続分は遺産のすべてになります。

子どもがいる場合は、配偶者と子どもが法定相続人になり、配偶者の法定相続分は2分の1、子どもの法定相続分も2分の1となります。

子どもが複数いる場合は、子どもの法定相続分2分の1を人数で分け合うことになります。

例えば子どもが3人の場合は、2分の1×3分の1=6分の1となり、子ども一人当たりの法定相続分は6分の1となります。

法定相続人が配偶者と親の場合は、配偶者と親が法定相続人となり、配偶者の法定相続分は3分の2、親の法定相続分は3分の1となります。

法定相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合は、配偶者の法定相続分は4分の3、兄弟姉妹の法定相続分は4分の1となります。

兄弟姉妹が複数いる場合は、兄弟姉妹の法定相続分の4分の1を人数で分けあうことになります。

例えば兄弟姉妹が2人の場合は、4分の1×2分の1=8分の1となり、兄弟姉妹一人当たりの法定相続分は8分の1となります。

2)法定相続の「誤解」と「実際」がトラブルを引き起こす?

前述している点と重複している点もありますが、相続の際はこの法定相続分に対して「法定相続分は必ず守られる」「法定相続分通りに遺産を分けなければいけない」と理解(誤解)されている方は比較的多くいらっしゃる印象があります。

誰が何を相続するかを話し合う遺産分割協議が完了していない時点では、法定相続分に応じた持ち分で故人の資産を共有している状態と言えますが、共有持ち分のままでは原則として預金を引き出すことはできません。

共有持ち分の状態を、誰の持ち物にするかを法定相続人の間で話し合い決める事を遺産分割協議と言い、預金を引き出すには、この協議を終わらせる必要があります。

法定相続人は、法定相続分を参考にしながら、遺産分割協議(話し合い)をすることになりますが、その結論が必ずしも法定相続分通りに分ける必要はありません。

むしろ法定相続分通りにきれいに分けられる方が珍しいとも言えるでしょう。

特に遺産が不動産など分けにくい資産である場合、尚更に法定相続分通りの分割は難しくなってきます。

この「何もしなくても法定相続分通りに分割されるもの」もしくは「法定相続通りに当然に分けなければいけない」という「誤解」と、「遺産の分割は、法定相続分通りにきれいに分けられるわけではない」という「実際」があり、この「誤解」と「実際」のはざまに、いわゆる「争族=争い」が起こりかねない危うさがあります。

「争いにならないように遺言書を書いておきましょう」とよく言われるのは、このような背景があります。

3, 法定相続分に対する扱いの難しい点

このように誤解されることもある法定相続分ですが、それゆえ扱いが難しいとも言えます。

例えば、配偶者が他界されて、残された法定相続人が妻と子ども一人という場合を想像してみましょう。

一人っ子の子どもが献身的に父親の介護をして、父親亡き後、母親のお世話も献身的にする場合は、配偶者2分の1、子ども2分の1という法定相続通りの遺産相続は、配偶者、子どもの双方にとって、受け入れやすい割合と言えるでしょう。

一方で、もし一人っ子の子どもが、仕事もせずに遊んでばかり、父親の他界後も何ら考えずに変わらず実家のお金を使って遊んでばかりの場合、配偶者2分の1、子ども2分の1という法定相続分通りの遺産相続は、前者の場合と比べて少々疑問があるのではないでしょうか。

残された配偶者の生活に支障がでてしまうようでは、元も子もありません。

何が正解で、何が不正解というわけではないのですが、法定相続分の通りに分けたからといって、家族の個々の事情に即した分け方ができているわけでは必ずしもありません。

それぞれの家族の事情に合った相続となるよう、民法のルールは理解しながら、相続をどうしていくかの道筋は立てておくことが大切と言えます。

亡くなられた方の人生はたった一つのものであり、他の誰とも同じ人生ではありません。

相続をどうしていくかについては、他の誰かの話は、参考にこそすれば良いものではありますが、同じである必要は全くありません。

冷静に考えると当たり前のことですね。

4, もめないための手段「遺言書」と書くことの難しさ

たった一つの人生、その相続を実現するための具体的な方法として、遺言書を書くということが挙げられます。

1)遺言書を作成する人の割合

法務省の調査によると、55歳以上で自筆証書遺言を作成したことのある人は3.7%、公正証書遺言を作成したことのある人は3.1%となっています。

年齢が上がるほど遺言書を作成している人の割合が高くなりますが、それでも75歳以上で自筆証書遺言を作成したことのある人が6.4%、公正証書遺言を作成したことのある人は5.0%となっており、遺言書を作成したことのある人は10人に1人程度の割合にすぎません。

遺言書を作成するのは少数派というのが実態です。

2)遺言書の話が前に進まない背景

遺言書では自身の持ち物を、誰に何を渡すかという事を書くことになります。

法定相続人また相続人ではないが渡したい誰かに、何を託していくかを記すことはそう簡単なことではありません。

子々孫々が仲良く暮らせるようにと総論での方針は決まりますが、それを具体的にどうするかの各論ではなかなか前に進めづらい様々な想いが湧き出ます。

一方で残される子供たちの側からすると、無用な争いや親族とのトラブルを避けるために両親に「書いておいて欲しい」と願うことは、無理もない希望です。

書く側からすると「簡単には書けない」その一方で、残される側からすると「早く書いて欲しい」となり、残す側、残される側それぞれの考えが交錯します。

両親からは「書いた方が良いとは思うが、誰に何を託すかどうしたら良いか分からない。子供たちが自分たちのやりやすいように任せたい。だから遺言書は書かない」という声がある一方、子どもからは「子供たちだけで決めるのは話しづらい。まずは両親の想いを教えて欲しい。どうして欲しいか教えてくれたら応えられるけれども、なかなか話してくれない」という声があるのもよく聞くお話です。

どちらの話も一理あり、どちらが間違っているというものではありません。

どちらもごもっともですから、なおの事、遺言書を書くのはそう簡単なことではないと言えそうです。

また、せっかく悩みに悩んで書いた遺言書であっても、様式を満たさない、細部まで行き届いていないなどの理由で、相続を滞りなくするためには不十分な内容で、かえってトラブルとなってしまうこともあります。

5, 相続でトラブルとならないようにするために

法定相続分をどう考えるかも難しく、争いを避けるために遺言書を書くのも難しいとなると一体どうすれば良いのでしょうか?

1)争いになる前にするべきこと

争いになった場合にどうするかを考える前に、争いにならないようにどうすれば良いかを先に考えたいものです。

一番大切なことは、生前に何をどうするかを決めておくために話し合いをすることです。

もし、話し合いをできない場合は、話し合いができない前提で何ができるかを考えます。

相続をされる側、相続をする側の双方当事者が全員揃うことが理想的ではありますが、様々な事情でそれが難しい場合は、次善策を考えます。

次善策も難しければ、次の次善策を考えます。

情報収集、できる手を尽くしたうえで出した結論であれば、それが最善の方法と言えますから、その方法を最後に遺言書に残すようにします。

相続人同士での合意や理解があれば、遺言書が必ず必要というわけでもありません。

2)話し合いは、話しやすいことから、思いやりをもって

相続される側、相続する側でお互いが顔を見合わせてしまい、話し合いが進行できないということも考えられます。

その場合は、専門家の意見を聞いてみる、相談してみるというのも一つの方法です。

「この前専門家の人に相談したら、このようなアドバイスを受けたのだけれど、どう思う?」という点から話が始まると、ご自身の意見という訳ではなく、専門家の意見を通しての話になりますから、角も立ちづらいです。

また、話を始める話題の一つに、ご両親の暮らしをどう守るか、万一の病気や介護の時に誰がどう支えていくか、老人ホームなどの施設は選択肢になるのかという話は、現実的に話しておかないといけないことでもあります。

暮らしの話から始めてご両親の生活をいかに支えていくかという話は、ご両親の銀行預金や生命保険の話にも繋がるため、相続の時にどうするかという話にも繋がります。

時にはいら立ちも感じることがあるでしょうが、思いやりの気持ちを大切に、じっくり、根気よく取り組むことが大切です。

相続の話し合いは、被相続人と相続人との後半のひと時、その多くは親子の関係を相続を通して深めて頂く時間です。

深まれば深まるほど、万一の相続が発生後でも、その時の話し合いが心の拠りどころとなって、残された家族は、より豊かで味わいのある人生を送れるはずです。

筆者自身も失敗は数々ありますが、拠りどころがあることは今を大切に生きる糧になっています。