マイホーム購入時の強い味方、住宅ローン控除に改正の兆し【専門家が解説】

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住宅ローン

2020年初頭よりはじまった、新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的流行に伴うロックダウンや渡航制限措置などにより、観光・外食産業をはじめとしたさまざまな業種が影響を受け、雇用に関する不安が広がっています。

その反面、不動産価格の上昇は続いており、2020年2月には東京23区内におけるファミリータイプ(70平方メートル以上)の中古マンション価格が6,000万円を超え、購入の難易度は高まり続けている状況です。

マイホーム購入額が高額な場合気になるのは返済計画ですが、住宅ローンのような長期的な返済計画を組む際は、ライフステージの変化による収支の変動といった内的要因のほか、住宅借入金等特別控除(通称:住宅ローン控除)の制度改正といった外的要因にも注意を払う必要があります。

本記事では、マイホームを購入する際の重要な要素となる住宅ローン控除の仕組みと制度改正について詳解していきます。

【今回の記事でわかること】

  • 住宅ローン控除の仕組み
  • 2021年度(令和3年度)税制改正による住宅ローン控除の見直しとは?
  • 住宅ローン控除のメリットをシミュレーションで把握

この記事を書いた人
菊原浩司(ファイナンシャル・プランナー)

FPオフィスConserve & Investment代表。2級ファイナンシャルプランニング技能士、一種証券外務員資格保有、管理業務主任者。不動産・資産運用、マイホームの取得、各種保険の活用や教育費の備えなど、老後貧困に陥らぬよう複雑化するマネープランに備えます。

住宅ローン控除の仕組み

住宅ローン控除を受けるには、床面積が50平米以上の新築・中古住宅をマイホームとして購入したり、省エネ改修工事やバリアフリー改修工事など一定の工事を行った場合に適用を受けることができます。

住宅ローン控除は導入後何度か制度改正を経ており、マイホームに居住を開始したタイミングによって控除内容が異なります。

2021年4月現在の住宅ローン控除の基本的な内容は「控除期間10年間にわたり住宅ローン年末残高の1%に相当する額を所得税(上限40万円)と住民税(13万6,500円)から税額控除する」というものですが、この控除期間が特例として新築の場合は2022年9月まで、それ以外の場合は2021年11月末までに契約し、2022年12月末までに入居した場合は控除期間を13年に延長することができます。

このように住宅ローン控除の制度内容は定まったものではなく、経済状況や世相などのによって刻々と変化するため、恩恵をフルに受けるには制度の見通しを知り、事前に準備を進めていくことが大切です。

2021年度(令和3年度)税制改正による住宅ローン控除の見直しとは?

経済への影響の大きい住宅需要を下支えするため、住宅ローン控除は当面継続が見込まれますが、2021年度(令和3年度)に実施された税制改正により住宅ローン控除の内容も変更されることとなりました。

今回の税制改正は、2021年1月1日から2022年12月31日までに入居した場合に適用をうけることができますが、今回は所得制限と適用要件に関する変更も行われているため、住宅ローン控除の適用から漏れてしまわないよう、最新の改正内容を把握しておきましょう。

床面積が40平方メートルでも適用可能に

通常、住宅ローン控除を受けるためには50平方メートル以上の床面積が必要ですが、今回の改正では特例として床面積の要件が緩和されており、40平方メートル以上50平方メートル未満でも適用を受けることができるようになりました。

この特例によりDINKS向けマンションなどのより小規模な物件でも住宅ローン控除の適用を受けることができるようになり選択肢の幅が広がることが期待できますが、カタログと実際の登記の床面積がわずかに違う場合があります。

特例適用ギリギリの床面積の物件を購入する場合は、トラブル防止のため事前にカタログなどではなく、より正確な登記情報を確認しておくことをおすすめします。

所得が一定額以下ならば控除期間が最大13年に

住宅ローン控除には所得要件があり、控除を受けようとする年の合計所得金額(事業所得・給与所得・不動産所得・一時所得・雑所得などを損益通算し、退職所得と山林所得の金額を合算したもの)が、床面積50平方メートル以上の物件ならば3,000万円以下であれば適用を受けることができますが、前述の特例を利用し40平方メートル以上50平方メートル未満の物件で住宅ローン控除を受ける場合は合計所得金額が1,000万円以下と所得要件が厳しくなっています。

合計所得金額の算出には金額の大きくなりやすい退職金や確定拠出年金の一時金が該当する退職所得も含まれているため、定年退職などが控除期間中に生じる場合には合計所得金額に注意するようにしましょう。

1~10年目と11年目~13年目は控除上限額が異なる

住宅ローン控除の税額控除には上限が設定されており、原則として利用できる1~10年目は住宅ローンの年末残高の1%または40万円のいずれか少ない額、特例として利用できる11~13年目は住宅ローンの年末残高の1%または26万6667円のいずれか少ない額となります。

住宅ローン控除のメリットをシミュレーションで把握

住宅ローン控除のメリットは、住宅ローン控除の控除率1%と住宅ローンの借入金利の差が大きくなればなるほどメリットが大きくなります。

住宅ローンの金利タイプは、半年前後で金利が見直される「変動型」と、一定期間金利を固定する「固定期間選択型」とフラット35などの全融資期間を通じて金利が固定される「全期間固定型」の3つに大別されますが、金利の低さから変動金利が62.9%と最も多く選ばれています。

そこで変動金利を用いた試算条件で住宅ローン控除のシミュレーションを行い、節税効果を具体的に把握してみましょう。

【試算①(2020年4月現在の税制を適用)】
・年間給与収入:1,000万円
・所得控除:給与所得控除195万円、社会保険料控除150万円、基礎控除48万円
・課税される所得金額:607万円
・所得税の納付額:76万円(607万円×所得税率23%-控除額63万6,000円)
・住宅ローンは単独で契約
・住宅ローンの融資額:6,500万円
・住宅ローンの融資期間:35年間
・住宅ローンの金利:変動型0.5%で35年間推移したと仮定
・返済条件:元利均等返済、ボーナス返済なし
・住宅ローン控除の区分:一般住宅

経過年数 年末残高 控除額 所得税納付額 累計節税効果額
1年目 6,329万6,334円 40万円

(上限)

76万円 40万円
2年目 6,158万4,130円 80万円
3年目 5,986万3,345円 120万円
4年目 5,813万3,938円 160万円
5年目 5,639万5,863円 200万円
6年目 5,469万9,078円 240万円
7年目 5,289万3,540円 280万円
8年目 5,112万9,201円 320万円
9年目 4,935万6,020円 360万円
10年目 4,757万3,955円 400万円
11年目 4,578万2,958円 26万6,667円

(上限)

426万6,667円
12年目 4,398万2,986円 453万3,334円
13年目 4,217万3,994円 480万円

上記試算条件では所得税の還付額は最大値に達していますが、住宅ローンの年末残高も4,000万円の上限額に達してしまい、節税効果を活かしきることができていません。

そこでひとつのマイホームを夫婦2人の住宅ローンで購入するペアローンの場合もシミュレーションを行ってみます。

住宅ローン控除を最大化するならば、夫婦ペアローンを利用する手も

所得税・住民税は収入額が同じ場合、1人で得るより複数人で得た方が税負担を小さくすることができます。

上記の試算条件を世帯年収1,000万円とし、夫婦それぞれで500万円ずつ給与収入を稼得し、共有持分50%ずつのペアローンをそれぞれ契約した場合の節税効果を試算してみます。

【試算条件②(2020年4月現在の税制を適用)】
・世帯収入:500万円×2人
・所得控除:給与所得控除144万円×2人、社会保険料控除75万円×2人、基礎控除48万円(住民税43万円)×2人
・課税される所得金額:所得税233万円(住民税は238万円)×2人
・所得税の納付額:1人あたり13万5,500円(233万円×所得税率10%-控除額9万7,500円)
・住民税の納付額(所得割):1人あたり23万8,000円(238万円×住民税の税率10%)
・住宅ローンの融資額:3,250万円×2人
・住宅ローンの融資期間:35年間
・住宅ローンの金利:変動型0.5%で35年間推移したと仮定
・返済条件:元利均等返済、ボーナス返済なし
・住宅ローン控除の区分:一般住宅

経過年数 年末残高 1人あたりの控除額 1人あたりの

所得税等納付額

1人あたりの

累計節税効果額

1年目 3,164万8,164円 31万6,481円 所得税:13万5,500円

住民税(均等割):

23万8,000円

27万2,000円
2年目 3,079万2,059円 30万7,920円 54万4,000円
3年目 2,993万1,664円 29万9,316円 81万6,000円
4年目 2,906万6,956円 29万669円 108万8,000円
5年目 2,819万7,916円 28万1,979円 136万円
6年目 2,732万4,520円 27万3,245円 163万2,000円
7年目 2,644万6,748円 26万4,467円 189万6,467円
8年目 2,556万4,575円 25万5,645円 215万2,112円
9年目 2,467万7,982円 24万6,798円 239万8,910円
10年目 2,378万6,947円 23万7,869円 263万6,779円
11年目 2,289万1,446円 22万8,914円 286万5,693円
12年目 2,199万1,457円 21万1,457円 307万7,150円
13年目 2,108万6,958円 21万869円 328万8019円

単独で契約した際は480万円だった節税効果が、夫婦で住宅ローン控除を利用した場合は約329万円×2人となり、合計で658万円の控除を受けることができるようになります。

夫婦双方が一定の収入を得ている場合、ペアローンによる住宅ローン控除の節税効果は大きく上昇します。

その一方で、マイホームが共有の状態となり、売却などの重要な決定は双方の合意が必要となるなど一定の制限が生じます。

また、夫婦一方の収入が減少した場合は、当初想定していた節税効果が得られなくなったり、住宅ローンの契約にかかわる事務手数料があ2倍となるなどのデメリットもあります。

ペアローンは節税効果を大きくできますが、デメリットや収入の変動により節税効果が不安定となる場合もありますので、リスクをしっかりと理解してから利用されることをおすすめします。

2022年度(令和4年度)以後は住宅ローンの控除上限額が縮小される可能性も

近年、借入金利が低下していることを受け、住宅ローンの控除率1%を下回る金利で住宅ローンを利用することができるケースが多くなっています。

住宅ローンの借入金利よりも住宅ローン控除の控除率が大きいと、支払った金利よりも多い額の税還付を受けることができるため、本来住宅ローンを利用する必要のない人まで節税のために住宅ローンを利用してしまう点が問題視されています。

この問題は、2022年度の税制改正によって控除額や控除率の見直しを行うと明言されています。

住宅ローンの控除額は、近い将来上限額が縮小され、住宅ローンの年末残高の1%または支払った金利の額のどちらか低いほうになると推測されますので、マイホームの購入を予定されている方は急ぎ検討を進めるとよいでしょう。

まとめ~住宅ローン控除を活用してマイホーム特有の支出に備えよう~

マイホームを購入すると、最大で35年に及ぶ長期のローン返済が始まるほか、固定資産税や管理費・修繕費といった継続的な支出が新たに発生します。

また、引っ越しや新生活に向けての家具・家電の購入といった一時的な費用もかさむためためしばらくの間は家計に大きな負担が及ぶことになります。

住宅ローン控除の節税効果は極めて大きく、控除期間を通じて還付を受けることができれば納税額などにもよりますが、数百万円単位の税還付を受けることも可能なため、マイホームの購入に伴う費用負担などで疲弊した家計を回復させる大きな原動力となります。

しかし、住宅ローン控除の制度内容は固定的なものではなく、これまで幾度も改正が行われてきましたが、特に2022年(令和4年)の税制改正では控除額上限の引き下げが行われる可能性があり、制度の改正を挟んで住宅ローン控除の節税効果が大きく変わってしまうかもしれませんのでマイホームの購入を予定されている方は、早めに検討することをおすすめします。