子どもへのお金の教育に関して、専門家の方にお話を伺いました。
買い物やお小遣い、親の仕事の話などお金に関する話題はたくさんあります。
どうやってお金の教育をしていくべきなのか、ぜひ参考にしてみてください。
【今回の記事でわかること】
- 子どものころから「お金の教育」が当たり前の時代に
- 家庭での「お金の教育」は必要?
- 「お金の教育」はどうやってやるの?
この記事を書いた人
竹内 幹
みきTFP事務所代表
保有資格:AFP(日本FP協会認定)
FP技能士2級
宅地建物取引士
「大人も子どももお金に賢くなろう!」をモットーに活動している独立系FPです。
保険会社・銀行・保険代理店勤務などを経て、独立FP事務所を開業して14年ほどになります。相談業務・執筆業務、マネーセミナー・FP技能士資格取得講座・宅建資格取得講座などの講師をしているほか、『子ども起業家育成講座』や『外国人の方向け講座』などの講師もしております。
お金についての知識を分かりやすくお伝えできるよう、心掛けています。
子どものころから「お金の教育」が当たり前の時代に
文部科学省が定める学習指導要領が改定され、小学校では2020年度・中学校では2021年度・高等学校では2022年度から新学習指導要領が実施されます。
高等学校の家庭科の授業で「資産形成」についても学ぶようになる、と話題になりましたね。
その中の新学習指導要領の中の「新たに取り組むこと、これからも重視すること」として
- 消費者教育
- 金銭教育
- 起業に関する教育
などが挙げられています。
「消費者教育」は、2022年4月から成年年齢が18歳に引き下げられることが背景にあると思います。
18歳で成年ということは、高校3年生で親の同意なしにクレジットカードの契約やローンを組むことができてしまいます。
また未成年を理由に、契約を取り消すということができなくなるので、18歳になる前に「消費者教育」を学ぶ必要があるのです。
「金銭教育」という面からでは、小学校でお金の計画的な使い方や売買契約について学習し、中学校では金銭管理の仕方やキャッシュレス決済についても学習します。
高校では家計管理の仕方などに加え、リスク管理の考え方についても学習します。
このように小・中・高通じて、段々具体性を持った金銭教育を身につけられるような流れになっているのが分かります。
また、高等学校で投資信託などの資産形成についても触れていくようになり、iDeCoの普及など、時代の流れに学校での学習内容も対応しているようです。
家庭での「お金の教育」は必要?
学校で「お金の教育」がなされるのなら、家庭でも「お金の教育」をする必要はないのでは?と思う方もいるかもしれませんが、そうではありません。
むしろ社会全体の流れとして、子どものうちから「お金の教育」をということになってきているのです。
お金は日々習慣的に使うものです。
お金の使い方や管理の仕方などは、学校で数時間学習したから身につくものではなく、日ごろからの積み重ねで身についていきます。
大学生でアルバイトをするようになったり、社会人になってお給料をもらうようになると、自分で自由になるお金を、まとまって得られるようになります。
その前に、土台としてお金の使い方などの経験があるか無いかで、お金の活かし方は大きく違ってきます。
またキャッシュレス決済の広がりなど、これからの子ども達は親世代と違うお金の使い方をしていくことになります。
小学生の頃から、家庭での「お金の教育」をしていくことが、お子様を賢い消費者に育てることにつながっていくでしょう。
ただ「お金の教育」といっても、何から始めたらよいか迷ってしまいますよね。
お金を殖やせるようになってほしいから、といきなり株や投資信託などの投資から教えようとしても、料理の基本を知らないのにフランス料理の作り方を教えるようなものです。
やはり基本から少しずつ伝えていかないと、お子様もとまどってしまいます。
そして、そういう時代だからといっても、親側も何から始めればよいか迷ってしまうかもしれません。
「お金の教育」はどうやってやるの?
では、どうやって家庭で「お金の教育」をしていけばよいのでしょうか。
家庭での「お金の教育」の始め方を、3つ提案します!
- 一緒に話をしながらお買い物をしよう
- おこづかいは最大のツール
- 親の仕事の話をしよう
詳しく説明していきますね。
①一緒に話をしながらお買い物をしよう
お子様と一緒に買い物をする、ということは普段からしていることと思いますが「話をしながら」というところが大切です。
大人でも、どの商品にしようか迷うときがあります。
そういうときも
「こっちは国産で外国産のより高いけど、国産の方がいいかなぁ?」とか
「一週間の食費の予算は〇〇円だから、献立をどうしようかなぁ?」など、
素直にお子様に相談してみてください。
子どもたちは大人が思っている以上にしっかりとした考えを持っていることが分かったり、親もこんな風に色々考えて買い物しているんだ、ということが子どもにも発見だったりします。
また「お菓子買って~」というおねだりにも
「ダメ」と一言で終わらせてしまうのではなく
「おウチにあのお菓子があるから、それを先に食べてからにしようね」とか
「それを買うと予算オーバーになっちゃうから、こっちのお菓子にしよっか?」という答え方にしてみると、目の前の物が欲しいからすぐに買うのではなく、今の予算を考えたり、今あるものを考えてから買うという習慣につながります。
親さん自体が「ついおいしそうなパンを見かけたら買ってしまう」など自分の中で分かっているのにやめられないお金の使い方があるとしたら、お子様との会話をしながらのお買い物によって、自分の行動もセーブできるかもしれませんよ。
②おこづかいは最大のツール
自分で使い道を決められるお金を与えてもらえる、それが『おこづかい』です。
おこづかいを渡すサイクルは、月単位でなくても構いません。お金の管理に慣れていないうちは、週単位や一日単位でも良いと思います。
金額は、小学生の時に多いのは「学年×100円」というパターンや、低学年のうちは500円・高学年になったら1,000円などのパターンが多いようです。
日本人は周りを気にする方が多いので、子どものおこづかいの金額は世帯収入と比例せず大体平均的な金額です。
また、どこまでをおこづかいで賄うかで、ご家庭ごとの違いはあると思います。
そして、おこづかいは最大の「お金の教育のツール」。
おこづかいを渡す際には大切なポイントがあります。
- ルールを作る
- 何にいくら使ったかを記録する
- 使い道に口を出さない
ルールを作る
ルールはご家庭で話し合って決めましょう。
大きく分けて二つ。
「学校で使う文房具などは親が買う」とか「友達と映画を観に行くなどの特別なときには〇〇円まで親から出してもらえる」などの支出のルール。
「このお手伝いを1か月毎日できたらプラス〇〇円」「自分の部屋の片づけが毎日できていたらプラス□□円」などの収入のルール。
私の娘たちはもう社会人ですが、小学生の頃は『定額おこづかい+プラス要因・マイナス要因』という感じで渡していました。
毎日いくつかの項目のチェック表があって、1か月全部できていたらプラス○○円とか、できない日が5日以上あったらマイナス□□円。
チェック項目はその都度子どもたちと話し合って決めていました。
こんな風に、ルールは話し合いによって変えていっても大丈夫。
むしろ積極的に色々話しながらルールを決めていけるといいですね。
何にいくら使ったかを記録する
何にいくら使ったかを記録する、というのは簡単に言うと『おこづかい帳をつける』ということです。
ただ、お子様によっては書くことが面倒に感じる子もいると思います。
そういう場合はレシートを必ず取っておいて、月・週単位などで集計する、という良いでしょう。
どんな形であれ、何にいくら使ったのかを振り返ってみることで、反省点がでてきたりお金の使い方が見えてきたりします。
使い道に口を出さない
使い道に口を出さない、というのは上記の使い道の振り返りともつながります。
子どもの使い道を見るとつい「こんなムダなものに使って!」と思ってしまうかもしれません。
でもそこはグッと我慢。
大人にとってムダに思えるものも、子どもには大切なものかもしれませんし、大人が100%ムダをしていないかと問われると、そうとばかりは言い切れないでしょう。
ただ親として「他に買いたいものはなかったの?」「これに使う金額を少し減らすと、あの欲しいものが買えるようになると思うよ」などのやりくりのアドバイスはしてあげましょう。
失敗や反省を繰り返しつつ、お金の管理の仕方も成長していきます。
長い目で見守ってあげてください。
大切なのは、おこづかいをあげっぱなしにしないことです。
③親の仕事の話をしよう
なんのキッカケもなく親の仕事の話を切り出すのは難しいと思いますが「今日こんな大変なことが仕事であってね・・・」とか「今日、仕事をしていてこんな嬉しいことがあったんだよ」という話から、親さんの仕事の内容についても話してみましょう。
そして、おこづかいを渡すときに、一生懸命働いて稼いだお金の中から、子どもたちが楽しいことに使うためにおこづかいを渡しているんだよ、ということを話せると良いと思います。
『お金は働いた対価として得られるもの』という基本は、親の仕事の話を通じて必ずお子様に伝えたいことです。
また、親の仕事だけでなく色々な職業についての話もしましょう。
子どもたちが知っている職業の範囲はとても限られています。テレビを見ながら登場した職業について話をしても良いですし、お子様の得意なことから、こんな職業もあるよ、という話につなげても良いですね。
子どもの頃から職業意識を持つことによって、どうして勉強が必要なのかを理解するきっかけにもなります。
お子様の得意なこと・やりたいことは、経験によって変化していくと思いますが、職業意識を持ちながら進路を選択できると、お子様自身のやる気につながりますよ。
まとめ
子どもの「お金の教育」はいつから始めればよいのだろう?というのは、そう考え始めた時がはじめ時なのです。
何歳から始めれば正解、というのがあるわけではないので、親として考え始めたら一歩踏み出してみましょう。
特にお子様から、お金に関する質問を受けたときは絶好のはじめ時です。
「子どもはお金のことなんか知らなくていい」という時代ではありません。お子様から受けた質問から逃げずに、ぜひ答えてあげてください。
そして、それをキッカケに色々話をしてみましょう。
「お金の教育」の始め方の3つは、なるべく気負わず始められるように挙げてみました。
ですが、それでも「おこづかいの額はいくらにしよう・・・」とか迷うこともあるでしょう。
おこづかいを一度あげ始めても、お金の使い方や話し合いで金額も変えていけば大丈夫なので、まずはこれぐらいでいいかな、という金額で始めてみましょう。
また、本文に挙げたものは例であって、お子様一人ひとりの性格は違います。
ダイエットも自分に合ってなければ続かないのと同じで、「お金の教育」もお子様に合ってなければ続きません。
お子様のことを一番よく知っている親さんだからこそ、お子様にあったやり方を見つけてあげてください。
子どもは親のお金の使い方をよく見ています。
普段何気なく話していることも、ちゃんと聞いています。
子どもに「お金の教育」をすることは、親さん自身のお金の使い方を見直すチャンスでもあるのです。
子どもにお金のことをあれこれ話したくない、という裏側には自分のお金の使い方を知られたくない、ということがあるとしたらそれこそ「お金の教育」を機にご自身も自分の理想のお金の使い方に近づいていってみましょう。
この記事を読んでいただいているうちに、皆さんのご家庭での「お金の教育」のイメージが少しずつ頭に浮かんできていると思います。
気負わず、ゆっくり、お子様といっしょに「お金の教育」を楽しんでみてくださいね。