サラリーマンのための「確定申告のススメ」!自営業者との違いからの考察【FP解説】

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お金の悩み

「確定申告されましたか?」

確定申告というと、それは一般的には自営業の人がするものだと、サラリーマンの方は考えておられると思います。

サラリーマンで確定申告するのは10万円以上医療費がかかったか、銀行や証券会社の特定口座を持っているかぐらいと考えておられるのではないでしょうか。

それは間違いではないのですが、今回は、サラリーマンの方にとっても、自営業者の確定申告との違いを明確に理解することによって、サラリーマンの方でも確定申告をもっと活用して人生を生きていけるようになるための方法について議論してみたいと考えております。

(これは脱税や無理な節税を薦めるためのものではありません。また、税理士ではありませんので、大まかな説明になりますので、ご了承下さい。)

【今回の記事でわかること】

  • 一般のサラリーマンの人の税務申告
  • 自営業者の人の税務申告
  • 「売上(収入)-経費=利益」という構造からわかること
  • これからのサラリーマンが考えていくこと
  • 追い風になる時代背景
  • 人生100年時代は、「1億総事業主時代」の到来!?

この記事を書いた人
M&M企画(社会保険労務士事務所)代表 北村 滋郎
特定社会保険労務士・キャリアコンサルタント
ファイナンシャル・プランナー(CFP/1級技能士)

1961年京都府長岡京市生まれ、神戸市在住。大阪大学人間科学部卒。
上場企業に人事として就職し、若くして管理職に就任。その後、正論を振りかざして上司を論破しまくったため、組織で孤立という挫折を経験し閑職に。阪神淡路大震災での被災を機に、日本古来の哲学・仏教等に関心を持ち、人は理屈だけで動くのでないことを学ぶ。自然哲学を活かした経営理論を多くの師匠から伝授され、成果を上げて、取締役に抜擢される。現在は、会社経営のみならず人生経営にも理論を発展させ、創業社長・二代目社長・地域のリーダー・学生の皆様のお悩みを解決する面談とセミナーを展開中。「人生と経営に関わる課題」を家庭教師のように一緒に解決していく手法が実践的」と好評を得ている。
著書「人生100年時代をまるごと100倍楽しもう!」(ギャラクシーブックス)

1.一般のサラリーマンの人の税務申告

(1)年末調整

企業に勤務するサラリーマンのあなたはが行う税務申告の場合は、勤務する会社の人事担当者が「年末調整」という税務申告を全て行ってくれています。

ゆえにあなたが用意するのは、

① 扶養する家族を記入する「扶養控除等異動申告書」を記入すること

② 生命保険(個人年金)や地震保険などの加入している場合、各保険会社から送られてくる「控除証明書」を保管しておき、「保険料控除申告書」にその年に支払った保険料を記入すること

③ 住宅ローンを借りている場合であれば、金融機関から送られてくる「年末残高証明書」を保管しておき、税務署から送られてくる(1年目の確定申告の後に送られてきます)「控除申告書」に残高を記入すること

④ 配偶者控除を受けられない配偶者に「配偶者特別控除」という控除を受けるための書類もあります。

以上の4つを用意して11月頃にあなたの勤務する会社の人事に提出するだけ。

あとは12月の給与明細に年末調整の結果として所得税が還付または徴収され、一緒に「源泉徴収票」という用紙が同封されてきて終わりとなります。

(2) サラリーマンが一般にする確定申告

サラリーマンは確定申告をまったくしないのかというと、そうではありません。

細かくいうとキリはないのですが一般的によくあるのは、

① 医療費が年間10万円以上になった場合(自分または扶養家族が入院した場合は該当することが多い)、にかかった費用をある一定の計算式で控除することができます。

病院(交通費も含まれる場合があります)の領収書は一年間保管しておく必要があります。

② 株や投資信託といった金融商品の取引があった場合で、特に損失が出たときなどは申告しておくと、その損失は翌年度以降に繰り越したりできるので、申告しておくと翌年度に利益が出た場合に、税金がオトクになります。

特定口座にしているからと、放っておかないようにすることも大切です。

2.自営業者の人の税務申告

自営業者(個人事業主)の税務申告がサラリーマンと大きく違うのは、自営業者には「経費」というものが存在しているということ。

サラリーマンの方にも「給与所得控除」という経費が存在し、収入により一定の割合が控除される制度がありますが、自営業者の「経費」とは比べものなりません。

自営業者にとって経費は個人事業を運営する際の大きな存在となっています。

それでは自営業者はどのように確定申告を行っているのかを見ていきましょう。

(1) 青色申告とは

サラリーマンと自営業者の最大の違いは「青色申告」です。

個人事業主として事業を始める際には、ほとんどの方が「青色申告承認申請書」を税務署に提出し、青色申告の個人事業主(自営業者)になります。

帳簿や決算書が面倒ということで「白色申告」を選択される人もいますが、最近では個人事業主用の会計ソフトが安く手に入り、使い方も簡単になってきていますので、多くの人が青色申告を選択されています。

青色申告承認申請書を税務署に提出したあなたは晴れて「青色申告の個人事業主」となります。

そこではお客さまからいただく売上という収入はわかりやすいですが、経費をこれから1年間かけて毎月計上していくという作業が発生してきます。

つまり経費として使った領収書を集めて記録し、会計ソフトにインプットしていくのです。

それではどんなものが経費となるのでしょうか?

これも細かいことを言い始めるとキリがないので、サラリーマンとの違いを中心に見ていきましょう。

(2) どんなものが経費になる?

基本的には自営業者として事業に関わるものを経費として計上することができます。

私がサラリーマンから自営業者になって違うなと思った主なことをいくつか列挙してみましょう。

(もっと詳しい経費計上の方法を知りたい方は、市販の書籍に経費計上の上手のやり方を指南するものがたくさんありますので、ご参照下さい)

① 仕事の書籍代。

サラリーマン時代も自己啓発のため多くの本を購入してきましたが、その書籍代を全て経費として落とすことができるのです。

また仕事に関連する研修やセミナーに行った場合も、その費用を計上することができるのです。

② サラリーマン時代は、筆記用具やプリンターのインクなど事務用品やパソコンなどすべて自分の小遣いから捻出していたものが、これらの品を消耗品代の経費として計上するのができるのです。

携帯やスマホなども事業として利用している分を経費(通信費)として計上することができるのです。

③ 事業を始めたばかりの人は、事務所を借りるとまではいかないので、自宅の一部を事務所として仕事をしている人がほとんどです。

サラリーマン時代の自分の書斎など自分の部屋を事務所にした場合は、その床面積を按分した自宅の事務所分、仕事でも使用する自動車も使用頻度を按分して、「減価償却費」として計上できるのです。

なぜ、お金持ちのお医者さまたちが高級な自家用車を次々と買い換えておられるのか、その理由を自分が自営業者となって初めて知りました。(私はそれほど儲かっていませんので、高級自動車は乗っていませんが・・)

また賃貸であれば、その家賃・駐車場代も按分して経費として計上することができます。

④ 最後にご紹介するのは、「交際費」です。

お客さまと喫茶店で商談したとき、仲間との懇親会費などが交際費として計上することができるのです。

サラリーマン時代は、管理職でしたので、会社の懇親会などで自分のお小遣いをはたいて、部下におごってあげたりしていましたが、一定のルールはあるもののこれらを「交際費」として経費に計上できるのは大きな違いです。

主なものを挙げてみましたが、いかがでしょうか?

サラリーマンでは毎月のお小遣いから出していた「なけなしのお金」の多くが経費として計上できるということがご理解いただけましたでしょうか。

それでは経費として計上したら、最後はどうなっていくのかを見ていきましょう。

3.「売上(収入)-経費=利益」という構造からわかること

サラリーマンには給与所得控除というものがありますが、これは税制改正で少しずつ減額されていく傾向にあるようです。

つまり、サラリーマンに課せられる税金の課税対象額のほとんどが「収入」に対し課税されて税額が決定されていきます。

一方で自営業者は、経費というものが存在し、税金の課税対象額は「経費を差し引いた利益」に対して課税されて税額が決定されているという構造上の相違点があるのです。

つまり自営業者は経費を上手に自分でコントロールすることで課税対象額をコントロールすることが可能である一方、サラリーマンは課税対象額をコントロールする余地はほとんどないということを意味しているのです。

だから、大金持ちのお医者さまは、高級な自動車を次々と買い換え、大金持ちの弁護士先生は、大きなビルの高層階に大きな事務所を構えることができるのです。

4.これからのサラリーマンが考えていくこと

なんとサラリーマンは損だな・・、と嘆いてしまっている人はいませんか?

毎年税金をきちんと払っているのはサラリーマンだけじゃないのか、と国を恨んでしまっている人はいませんか?

しかしながら自営業者というのは、毎月の売上が変動し、自分で営業し顧客を獲得していく等という点で非常に苦しい思いもしているし、現在のようなコロナ禍においては、毎月安定した給料がもらえるサラリーマンは大きなメリットもあるのです。

やはり、どちらも一長一短というというところがあるのです。

ならば、これからのサラリーマンとして考えていくべき道はどんなことがいいのでしょうか?

それはサラリーマンをやりながら「副業」していくことだと私は考えます。

副業といってももう一つ別の(複数の)会社に勤務するのではなく、自営業者(できれば青色申告の個人事業主)として副業をしていくというなのです。

そうすることによって、安定した収入のあるサラリーマンという利点と経費を計上して課税対象額をコントロールできる自営業者の利点を両方兼ね併せた自分オリジナルなキャリアが展開できるはずなのです。

5.追い風になる時代背景

先頃、施行になった70歳就業法をご存じでしょうか。

① 70歳までの定年引き上げ
② 定年制の廃止
③ 70歳までの継続雇用の導入
④ 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する精度の導入
⑤ 70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる精度の導入

以上がその内容です。

まだ企業にとっては努力義務なので、本気で実施する企業は多くはないでしょうが、法律が変わり、この法律が努力義務ではなく、罰則付きの義務になるのも時間の問題かもしれません。

いずれにしても注目して欲しいのは④です。

もし、あなたが自分のキャリア活かした自営業者(個人事業主)として副業を若いうちから築きあげることができた場合には、経費を計上し、利益をコントールしながら、70歳までに自営業者として独立しても元の会社から70歳までに業務委託を受けることができるということを意味しているのです。

また働き方改革の側面からも、これからは週休3日制の導入が検討され、就業規則でも副業が解禁され、推奨されていく傾向になりつつあります。

週休3日となったら、あなたはその時間をどのように使いますか。

旅行したり、グルメツアーや趣味・スポーツといったリクリエーションもいいでしょう。

しかし、それらはいつか飽きてしまうのではないでしょうか。

定年になったサラリーマンの人も定年になって最初の3ヶ月は好きなことができて楽しいのですが、すぐに飽きてしまい、やることが無くなり、自分の本当の居場所探しを始めるということをよく耳にします。

それならば、これからは、サラリーマン時代に自分のキャリア積む上げ、キャリアを活かした副業を仕事の合間に開業し、自営業者となり、いけると判断したら思い切って自営業者として独立していく。

このことに週休3日を経費を使いながら活かし、オトクに確定申告していくことで資金の一部を充当していく。

これが最も税制上の有利なキャリア形成になっていくということではないでしょうか。

そのために自営業者としての確定申告をサラリーマンの人もしっかり勉強しておく必要があるのです。

6.人生100年時代は、「1億総事業主時代」の到来!?

人生100年時代と呼ばれ、この言葉はもはや当たり前となりました。

しかしながら、これは65歳を人生の転機と捉えても、残された時間はまだ35年あるということを意味しています。

35年というと、ほとんどもう一回人生をやり直せるのと同じくらいの時間があるという意味なのです。

学校を卒業して、40年働いて、定年になって、退職金と貯金と年金で老後を過ごして人生を終える、という単純な人生モデルでは、通用しなくなる時代なのです。

就職してキャリアを積んで、さらにシニアに向けて本当の自分のやりたい仕事の準備を副業で開始し、65歳前後(実際の時期は一人ひとり違いますが)で独立開業し、自営業(個人事業主)として生涯を現役で生きがいを持って100歳まで生き抜く。

そんな人生とキャリアのモデルがこれからの生き方の主流になるのではないでしょうか。

その資金の確保のためにも、若いうちから上手に税金と向き合い、確定申告を活用していくことが必要となるのでしょう。

「1億総事業主時代」に向け自営業者としての確定申告の知識がどうしても必要になるのです。

これこそがポストコロナ時代の主流の働き方になる日はすぐそこだと私は確信しています。