所得補償保険とは?就業不能保険との違い・加入前に知っておきたいこと【FPが解説】

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お金の悩み

「もし、今病気やケガなどで働けなくなったとしたら、生活はどうなるのだろうか」

そんな考えが頭をよぎったことはないでしょうか?

また、あなたはそうなった時の生活を想像したことはありますか?

働けなくなった時の保険として今回案内する「所得補償保険」のほかに「就業不能保険」というものがあります。

それぞれの違いも含めて、今回は以下の内容について一緒に考えていきたいと思います。

【今回の記事でわかること】

  • 所得補償保険とは?
  • 所得補償保険はどんな人が加入を検討すべきか
  • 所得補償保険と就業不能保険の違い
  • 加入を検討する前に知っておきたいこと

この記事を書いた人
鎌倉 一江

保有資格 AFP・終活アドバイザー

自身の相続問題をきっかけに、お金の勉強をしようと一念発起し保険業界へ転職し、その後商品を取り扱わない独立系ファイナンシャルプランナーとして独立。
【人生設計をヒアリングしながらお金のプランニングをすること】【クライアントがより理想の人生を歩めるように、「おかねの効率の良い使い方」と言った少し特殊なアプローチ】を得意とし
より多くの方が、おかねと上手に付き合い理想の人生が歩める手伝いをしている。

1.所得補償保険とは?

所得補償保険とは、被保険者(保険の対象者)が疾病または傷害で就業不能となった場合に、被保険者がその間被る損失を補償する保険です。

国内・外を問わず、レジャーや旅行などの日常生活や仕事中の事故などの身体障害も補償対象となります。

ただし、妊娠または出産によって就業不能となった場合やアルコール依存・薬物依存によって就業不能になった場合、地震や噴火、またはこれらによる津波によって生じたケガなどに対してなど補償対象外となるものもあるので、加入時は補償範囲を確認する必要があります。

支払われる保険金は、就業不能期間1ヶ月につき保険金額が保険金として支払われます。その保険金額は、平均月間所得額が限度となります。

この所得とは、保険会社にあらかじめ告知している業務を遂行することにより得られる給与所得・事業所得または雑所得に関わる総収入金額から就業不能となることにより支出を免れる金額を控除したもの(接待交通費・旅費交通費など)をいい、利子所得や配当所得・不動産所得・年金などは就業不能の発生に関わらず得られる収入のため対象外です。

また、保険金の支払い事由に該当したからと言ってすぐに保険金が支払われるわけではないということも覚えておきましょう。

一般的に、所得補償保険には「免責期間」というものがあります。

この「免責期間」とは、本来であれば保険金が支払われる事由が発生しても、その期間内は保険金は支払われないという期間のことです。

所得補償保険の免責期間は、7日間程度の短いものと60日から365日程度の長期間のものと大きく2つタイプがあります。

この免責期間を過ぎると、保険金を受け取れるのですがいつまでその保険金が受け取れるのかという補償期間も大きく分けて2つタイプがあります。

まず、一つ目は2年以内の短期タイプです。

そして二つ目が60歳あるいは65歳といった一般的に退職時期をイメージする時期までの長期タイプです。

一時的な入院に備えたいという考えの場合は短期タイプ、寝たきりの状態などが続くようなときに備えたいという考えの場合は、長期タイプを選択する方が多いです。

保険料は、一般的に被保険者の年齢、補償期間、保険金額、被保険者の職種で決定します。

同じ年齢、同じ保障期間、同じ保険金額でも、リスクが高いと保険会社から判断されている職種に就いている方が保険料は高くなります。

2.所得補償保険はどんな人が加入を検討すべきか

自営業者者フリーランスの方は、病気やケガで就業不能状態になると収入がその時からと出てしまう場合がほとんどのため、収入減少のリスクに対応してくれる所得補償保険の必要性は高いと考えられます。

もちろん、すでに緊急予備資金として収入2年分以上の貯蓄がある方はそこまで必要性は高くないでしょう。

貯蓄の有無以外にも、ご自身の生活環境や職種も保険加入を検討するうえで考えるポイントとなります。

就業不能状態ということは、働くことが難しいほど体力が落ちていたり体を動かすことが困難な状況が想定されます。

そのような時に、家族から身の回りの世話などをしてもらえる環境なのか、それとも家族以外の人に依頼をする予定なのか、また仕事は寝たきりの状態でも出来る内容なのかなどもしっかりと想像しましょう。

そのうえで、短期の補償か長期の補償か、もしくは必要ない状態なのかという判断をしましょう。

会社員・公務員の方は、「傷病手当金」というものがあります。これは加入している健康保険から受給されるもので下記の条件を満たすと受け取ることが出来ます。

  • 業務外で病気やケガをし、仕事が出来ない場合
  • 連続する3日間を含む、4日以上仕事が出来ない場合
  • 休職期間中に給与の支払いがないこと

これらに該当したら、申請することで「支給開始日以前の継続した12ヶ月の各月の標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3」を最長で1年6か月受給することが出来ます。

ちなみに仕事が原因で就業不能となった場合は一般的に労災保険が適用されます。

障害年金や労災保険もあるため、会社員・公務員の方は、自営業やフリーランスの方よりも所得補償保険加入の必要性は低いと言えますが、より長期の就業不能となるような病気やケガに備えたい、公的保障だけでは不安だという考えをお持ちの方は加入を検討すべきでしょう。

3.所得補償保険と就業不能保険の違い

所得補償保険と就業不能保険は、二つとも就業不能状態になった時に助けてくれる保険ですが名前が違うだけでなくそれ以外にもいくつか異なる点があります。

まず一つ目は、販売している保険会社が違うことです。

所得補償保険は損害保険会社が取り扱っており、就業不能保険は生命保険会社が取り扱っています。

また、注目すべき点は「ほしょう」という字の違いです。

損害保険会社が取り扱っている保険は基本的に「補償」という漢字が使われ、生命保険会社が取り扱っている保険は「保障」という漢字が使われています。

同じ「ほしょう」でも漢字が違うと意味も異なります。

「補償」は、「損害や出費などを金銭で補い償うこと」という意味があります。

つまり、損害保険は基本的に損害に対して保険金が支払われているということです。

では、「保障」は何を意味しているかということですが、「保障」は「万が一の時に、不安が生じないように本人や家族の生活を守る」という意味合いがあります。

社会保障にもこの字が使用されていますね。

こういった意味の違いから、所得補償保険の保険金額は「平均月間所得額の70%」「平均月間所得額の50%」などあらかじめ保険会社が設定した中から自分で選択することが多いですが、就業不能保険は保険金額を年収をベースに自分自身で決めることが出来ます。

もちろん、年収を越えた金額は設定できませんが。月々の保険金額を1万円単位で自身で設定できる保険会社がほとんどです。

保険期間も同様で、所得補償保険は決められたいくつかの期間から自身で選択するものがほとんどですが、就業不能保険はその期間を自身で設定することが可能です。

これらのことから、所得補償保険は比較的決まった期間に収入を補う補償を持ちたいという方に、就業不能は長期間にわたって、自身で設定した保険金額を受け取りたいという方に向いているかもしれません。

どちらも就業不能時の生活をカバーしてくれるという目的は同じなので、保険料や保険期間、支払い事由などを商品ごと確認して、ご自身の希望にあったものに加入しましょう。

4.加入を検討する前に知っておきたいこと

所得補償保険に限らず、保険を検討する前に必ず確認しておきたいことに、家計の収支バランスが挙げられます。

本当に保険料を支払い、毎月の支出を増やしてでもその保険が必要なのかということは考えるべきです。

そのためにまずは「ライフプランシミュレーション」というものを実施すると良いでしょう。

「ライフプランシミュレーション」とは、お金の収支を予測するキャッシュフロー表のようなものです。

あくまでも予測ですし、未来は何が起こるか分かりませんから、シミュレーションをしたとしてもその結果は絶対ではありません。

しかし、非常に便利なツールです。

例えば、現在の収支を入力すると将来の貯蓄額はどうなるのか、老後赤字家計になることはあるのだろうか、病気やケガで就業不能状態になった時に、貯蓄で何とかなりそうなのか、なんとなりそうであればそれはどれくらいの期間なのかなどを予測することが出来ます。

ライフプランシミュレーションは、私たちFPに依頼して一緒にすることも出来ますが、私は極力ご自身で実施することをお勧めします。

現在、インターネットで「ライフプランシミュレーション ツール」と検索すれば無料で実施できるものがいくつか出てきます。

簡単に出来ますし、ご自身の人生なので是非取り組んでみましょう。

シミュレーションをするためには、ある程度家計を把握する必要がありますし、ライフイベントも、家族の考えや会社の保障、社会保険なども知る必要があります。

少し、面倒だと思うかもしれませんが、本来であれば全て知っておいてほしい内容です。

きっちりと作る必要はありません。

むしろ、将来は予測不可能ですので柔軟に対応できるようざっくりと作っておくと良いでしょう。

ご家族がいる方は、出来ればご家族の意向も反映させましょう。

共にこれからも生きていくのですから、一人よがりのシミュレーションでは良くありません。

ざっくりとシミュレーションが出来たら、定年退職までの家計収支バランスを確認します。

支出と収入がずっと同じくらいの金額が続き、なかなか貯蓄が出来ていない状況であれば、所得補償保険は必要です。

なぜなら、貯蓄がない状態で就業不能になったら、赤字家計が続くということが目に見えているからです。

逆に、何年も収入がなくても貯蓄で生活できる状態であれば、所得補償保険は必要ないかもしれません。

ライフプランシミュレーションをすると、所得補償の必要有無以外にも、自身の死亡保険金額はいくらにしたらいいのか、老後の生活は経済的に何とかなるのだろうか、医療保険やがん保険は加入したほうが良いのだろうか、など、基本的に生命保険の有無を判断したり、将来のお金の流れを確認することが出来ます。

もちろん、確認するだけでなくそこから対策を打つことが出来ます。

保険はその対策方法の一つですので、「ライフプランシミュレーションを実施する」という方法を知っておくと、効率よく対策を考えることが出来るでしょう。

5.まとめ

所得補償保険は、病気やケガで働けなくなった時の収入減少リスクに備える保険です。

就業不能状態であるという医師の診断が下りてから免責期間(7日程度や60日など商品により異なる)を経て、その後の補償期間保険金を受け取ることが出来ます。

この保険は、特に自営業・フリーランスの方のように傷病手当のような公的保障がない立場の方たちに加入検討をお勧めしています。

なぜなら、会社員・公務員は就業不能状態になった際に約1年6か月間、給与の約2/3程度の傷病手当を受け取ることが出来ますが、自営業・フリーランスの方はそれがないため無収入になってしまうからです。

補償期間は2年以下の短期タイプと60歳・65歳までの長期タイプがあるため、職種や貯蓄など総合的に判断してご自身の意向にあったタイプを選択しましょう。

尚、会社員・公務員の方でも傷病手当だけでは生活が不安ということであれば、所得補償保険加入を検討しても良いと思います。

保険は、万が一の時に役立つものなので、何もなければ保険料はただの支出にすぎません。

加入するときは、ライフプランシミュレーションをし、お金の流れをざっくりと把握したうえで、「保険料を払って万が一の時があった時に保険金を受け取って良かったと本当に想えるのか」ということを家族でしっかり話し合い判断するようにしましょう。

執筆 おかねの研究所 鎌倉一江