退職前は不安がいっぱい、人生の年表を作ってこれからの方針を決めよう【FPが解説】

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お金の悩み

急な出費でお財布の中の所持金が少なくなってしまい、給料日まであと何日だろうと指折り数えたこと、どなたにもご経験があるのではないかと思います。

給与所得者にとっては、お給料が毎月決まった日に振り込まれるのが当たり前のようになっていて、給料日にお金が振り込まれるからこそ安心してお金を使うことが出来るという風になっています。

それが退職したら、毎月決まった日にお給料が振り込まれるということはなくなります。

「退職する=今までの収入が無くなる」と考えたとき、果たしてこれまでと同じような生活が出来るだろうかと、不安な気持ちでいっぱいになるのも無理はありません。

特に定年で退職したら収入の不安の他にも老後の生活や健康などいろいろな種類の不安が生じる可能性があります。

【今回の記事でわかること】

  • まずはスケジュールの確認から
  • 退職するにあたって決めておきたい事、気をつける事
  • 退職金をもらったときに気になる税金のこと
  • 退職してからの生活の実感はどんなものか
  • 大事にしたい家庭での時間と役割
  • 人生の年表から考えられること
この記事を書いた人
梅川 ひろみ

保有資格
CFPⓇ ファイナンシャルプランニング技能士1級
整理収納アドバイザー、終活アドバイザー専業主婦を経て大手銀行に15年勤務、金融の知識と子育て、教育費の準備、住宅ローンの返済、保険の見直しなど主婦時代の経験から「主婦ができる家計の工夫で将来に備える方法」などお客さまの暮らしに合わせてライフプランのアドバイスをします。お子さんがいらして外出しにくい方でも気軽にお話しいただけるよう相談はオンラインで行っています。

まずはスケジュールを確認することから始まります

いろいろな不安を小さくしていかないと生活を楽しむことが出来ません。

まず収入の不安を小さくするためにすること、それは、自分の年金がいつから受け取れるのかという「時期」と受け取れる「金額」を確認することです。

年金については、ねんきん定期便や社会保険事務所へ問い合わせで確認することが出来ます。

金額も気になるところですが肝心なのは受け取れる時期です。

年金が受け取れるようになるまでのスケジュールはどうなっているでしょうか。

退職してから年金が受け取れるまでに空白期間がある場合、貯蓄を取崩して生活するのか、何らかの方法で収入を得るのかというという事を決める必要があるからです。

いわば今後の人生のスケジュールを決めるという事になります。

このスケジュールを決める時に作ってみたいのが「人生の年表」です。

人生の年表は今後の生活を考えるため、仕事を始めてから退職までのこと、さらにこれからの生活についての夢や目標を時系列に書き出してみるものです。

表に家族の年齢も書き加えておくと家族との時間についても俯瞰することが出来、スケジュールがより立てやすくなります。

人生の年表で仕事を始めてからのことを書くのは、現役時代の仕事や人脈の棚卸につなげて振り返りと今後の方針やスケジュールを立てるのに役立ててるためです。

人生100年時代といわれ医学の進歩によって寿命が延びて老後の生活が長くなっていますが、健康で活動できる時期がどれくらいあるだろうかということを考えると、人生の年表による振り返りと今後の方針やスケジュールを決めるという事が、豊かな人生を送るためにはとても重要になってきます。

退職するにあたって決めておきたい事、気をつける事

次に退職した後の制度で、自分だけでなく家族にも影響が出ることについてあげていきます。

それは、健康保険と家族の年金のことです。

まず、健康保険についてですが、退職するとそれまで勤務先で加入していた健康保険の資格が無くなります。

日本ではすべての国民が何らかの健康保険(公的医療保険)に加入するという国民皆保険制度をとっているので退職したら何らかの健康保険に加入している必要があり、退職してから加入する健康保険制度を次の3つの中から選ぶことになります。

第1は、家族が入っている健康保険に加入する方法です。

加入できれば保険料の負担はありませんが、加入には収入などの一定の要件があり、要件を満たしていなければ加入することができません。

第2は、国民健康保険への加入です。

国民健康保険は住んでいる地域や年収によって保険料がちがい、家族がいれば一人ひとりの分の保険料が計算されて世帯ごとにまとめて支払います。

第3は現在加入している勤務先の健康保険を任意継続する方法です。

支払う保険料はそれまで会社が負担していた分の保険料も自分で負担することになります。

継続の期間は最長2年。

今まで会社が負担していた分も自分で払うことになるので、一見すると国民健康保険の保険料の方が安いと思われるかもしれませんが、扶養している家族が何人いても保険料が変わらないということを加味して考えると、国民健康保険に加入するより保険料の負担が少ないという場合も出てきます。

どの健康保険を選ぶかについては、加入の条件をよく調べておき、どれが自分に合っているか比較検討します。

病気があって入院での高額な医療費を払う機会が考えられるような場合には任意継続がよさそうですが、退職した翌日から20日以内に申請しなければならないというような期限もありますので、保険料だけでなくご自身の退職前の収入や扶養している家族の人数、病気などの状況も考え合わせて退職前から決めておくのがよいと思います。

次に家族の年金についてですが、配偶者が年下の場合の年金には注意が必要です。

退職時に配偶者が60歳未満で、ご自身が退職した後仕事をしない時、または仕事をしても厚生年金に加入しないで働く時、さらに配偶者が専業主婦、主夫あるいは厚生年金に加入していないパート勤務の時には、配偶者は第1号被保険者として60歳まで国民年金保険料を払う必要が出てきます。

それまでは第3号被保険者として配偶者は自分で国民年金保険料を支払っていないので気づきにくいのですが、第3号被保険者から第1号被保険者への切り替えが必要なのです。

切り替えないで年金保険料を払わないままでいると国民年金が未納の状態になってしまいます。

切り替えを忘れないように気をつけましょう。

退職金をもらったときに気になる税金のこと

退職金は金額が大きいので税金がたくさんかかるのではないかと思っていらっしゃる方がいるようです。

退職金を一時金で受け取る場合には、受け取る退職金の額から勤続していた年数に応じて計算された退職所得控除の金額を引いた残りの額の2分の1に対して税金がかかるため、ほかの所得よりも優遇された税金のかかり方になっています。

場合によっては税金がほとんど課税されないということもあるのでご心配なら勤務先にご確認されると良いと思います。

所得税の納め方については、分離課税といってほかの所得とは別に計算され、退職の時に「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出すれば支給額から税金が差し引かれることになります。

ここまで退職する前に決めておきたい健康保険のことと気をつけたい家族の年金のこと、気になる退職金にかかる税金の事について述べましたが、いざ、退職後の生活が始まってからの実感はどんなものなのでしょうか?

退職してからの生活の実感はどんなものか

今まで毎月振り込まれていた給料という収入が無くなり、年金収入はあるものの、足りない分は貯蓄を取り崩すという事での金銭的な不安は付きまといます。

ただ不安がっているばかりでは生活を楽しむことが出来ませんので、少しでも不安を少なくするために最初にしておきたいことがあります。

それは、現在の貯蓄額と住宅ローンなどの負債の額、生活していくのにかかる費用を正確に把握することです。

人は見えないものに対して必要以上に不安を感じます。

数字をはっきりさせるだけでも不安を和らげることにつながります。

ここで「人生の年表」の出番です。

退職して給料という収入が無くなり年金を受けとるまでの期間、収入の道がなければ貯蓄を取り崩して生活することになりますが、仕事をする事を選んで貯蓄を取り崩して生活するのを少しでも先に延ばすという方針を立てることもできます。

働くという事とともに、生きがい、交際の範囲や趣味の持ち方、健康状態などの条件を照らし合わせたお金のかけ方についての方針も併せて考えます。

収入を得るにしても年金で生活するにしても気をつけなければいけないのが、現役時代の生活をそのまま続けてしまうことです。

あまり考えずに現役時代と変わらないお金の使い方をしていては貯蓄が底をつく時期がどんどん早まってしまいます。

数字の把握と検証は必ず行いましょう。

支出を抑えるために見直すのは、趣味にかけるお金や交際費などですが、場合によっては保険を見直すなどの、毎月かかるお金を少なくする必要が出てくるかもしれません。

何が必要で、何を抑えるのかを決めていくためには、今かかっている数字をなるべく正確に把握するところが始まりです。

支出を抑えるということについて最初は窮屈に感じるかもしれませんが、何より抑える事で貯蓄の取り崩しのペースを遅くすることが出来ると考えると窮屈がイヤとばかりは言っていられません。

家族で話し合いながらゲーム感覚で取り組むくらいの気持ちの余裕がもてるといいと思います。

数字の把握により無駄だと思われる部分が検証でき、慣れていくことで時間と共に窮屈に感じていた気持ちは自然とおさまっていきます。

退職してからのお金に対する考え方は、定期的な収入がある現役時代と違って「積極的に貯めて増やす」というより、今あるお金を「減らさないことがすなわちお金を増やすこと」という事になりますので、感覚を切り替えていくことがとても大切になります。

大事にしたい家庭での時間と役割

退職して新しい時間の使い方が出てくる中で、もう一つ大切にしたいのが家庭での時間の使い方です。

高齢化社会の中でご両親も存命だったとすればご両親の介護や相続のことなどで、互いに所帯を持ってから少し疎遠になっている兄弟や姉妹とのコミュニケーションが必要になることが出てくることも考えておかなければなりません。

他には、今まで地域とのことを配偶者任せにしていたとしたら、ご自身が地域とのつながりを持つことでボランティア活動に力を発揮するといった場面が出てくるという事もあるでしょう。

地域とのかかわりは災害や防災といった側面からも大切な事ですので積極的にかかわっていくことも必要です。

コミュニケーションと言えば配偶者との関係では、在宅の時間が多くなった場合には良好な関係を保とうと意識することも必要。

家事を分担するという事も考えられますが、今まであまりしていなかった料理や掃除をしようというのも無理なことかもしれないので、まずは時間のある時に自分の持ち物を見直して、片付けや整理していくことから始めてみるのもいいかもしれません。

生前整理というと少し大げさになりますが、持ち物を少なくして管理しやすい状態にしておくことは今後生活していく上での身の回りの安全につながっていきますので是非手掛けていきたい事柄です。

持ち物の整理をする時には何よりも体力が必要と思われがちですが、体力以上に物の「要る、要らない」を判断するという選別の作業は、年齢を重ねるほどしにくくなります。

物を整理する事の行きつく先には、ご自身がどう生きていきたいか、という心の整理につながっていきますので体力、気力があるうちから着手しておくことをお勧めします。

人生の年表から考えられること

現役時代、主に家庭と職場という世界だけで生活していた場合、交際範囲が仕事関係に集中していて人脈が少し狭くなっているかもしれません。

現役時代に仕事以外の人脈が広がっていると、退職してから今までやっていた仕事以外の収入に結びつきそうな事柄での起業や、収入を得なくてもやりたい事、やってみたい事に出会える可能性が大きくなります。

できれば現役時代から家庭や職場以外の人脈を積極的に作っておくということが望ましいのですが、今まで特に意識していなかったとしたら、急に人脈を広げようとしても上手くいかないということもあろうかと思います。

そんな時には、人生の年表で振返り、仕事以外での人脈の掘起しや、やりたかった事やってみたい事を見つけて有意義な時間につなげていっても遅くはないと思います。

おわりに

ここまで退職するときに気をつけたい制度のことと合わせて、年金生活へのシフト、不足分は貯蓄を取り崩すという事へのお金の不安、他にもいろいろな種類の不安が生じる可能性があることを申し上げました。

退職してからの事を前もって知っておく事で不安が和らぐということもありますので、集めていった情報で不安を少なくしながら、お金の事だけでなく心や気持ちの準備について家族で話し合い、人生の年表での振返りから人とのつながりを掘起こし、先々生きがいのある時間が過ごせるように考え、自分の価値観も加えながらご家族と素敵な退職後の生活が送れるようになっていただけたらいいなあと思います。