みなさんは、会社から銀行口座に振り込まれたお給与などの収入について、どのように管理しているでしょうか。
そのまま銀行口座に預貯金としておいている人も多いでしょう。
一方で、貯蓄性の高い保険商品を購入したり、投資信託や株などの有価証券に投資をしている人もいるかもしれません。
今回は、お金を増やす資産運用のメリットや、その始め方について、一緒に確認していきましょう。
【今回の記事でわかること】
- 日本人の金融資産の保有額
- 金融資産の国際比較
- 貯蓄から投資の時代へ
- 資産運用のメリット
- 資産運用の始め方
下中 英恵(したなか はなえ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)、第一種証券外務員、内部管理責任者
東京都出身。2008年慶應義塾大学商学部卒業後、三菱UFJメリルリンチPB証券株式会社に入社。富裕層向け資産運用業務に従事した後、米国ボストンにおいて、ファイナンシャルプランナーとして活動。現在は日本東京において、資産運用・保険・税制等、多様なテーマについて、金融記事の執筆活動を行っています。
日本人の金融資産の保有額
金融資産とは、預貯金のほか、保険商品、投資信託や株、商品券など、現金と同じ価値があり、現金に換金できるものを指します。
一般的に言われている「家庭の貯蓄額」は、「家庭の金融資産の総額」と言い換えることができます。
では、実際ところ、現在日本の家庭において、どのくらいの金融資産をどのような形で管理しているのかチェックしていきましょう。
金融広報中央委員会が行った調査(*1)によると、令和元年の1世帯当たり(2人以上世帯)の種類別金融商品保有額は、以下の通りとなっています。
<1世帯当たりの種類別金融商品保有額>
金融資産保有額総額 | 1139万円 |
---|---|
以下内訳 | |
預貯金 | 487万円 |
金銭信託 | 4万円 |
生命保険 | 265万円 |
損害保険 | 36万円 |
個人年金保険 | 83万円 |
債券 | 28万円 |
株式 | 120万円 |
投資信託 | 76万円 |
財形貯蓄 | 29万円 |
その他 | 11万円 |
全年齢の1世帯当たりの金融資産保有額は、1139万円と1000万円を超えています。
種類別に見ると、預貯金の割合が最も多く、全体の半分近くを占めています。
一方、預貯金以外では、生命保険で保持している人が多く、次が株式となっています。
金融資産の国際比較
次に、金融資産の構成について、日本以外の国をチェックしていきましょう。
同じく金融広報中央委員会が行った調査(*2)によると、先進国の家計の金融資産構成は、以下の通りとなっています。
<家計の金融資産構成の国際比較>
日本 | アメリカ | ユーロエリア | |
---|---|---|---|
現金・預金 | 53% | 13% | 34% |
保険・年金準備金 | 29% | 32% | 34% |
株式・出資金 | 10% | 34% | 19% |
投資信託 | 4% | 12% | 9% |
債券 | 1% | 7% | 2% |
その他 | 3% | 3% | 2% |
この調査結果を見ると、日本における現金預金の保有割合が、その他の先進国と比較して、最も高いことが分かります。
一方、アメリカやユーロエリアは、株や投資信託などの有価証券に積極的に投資を行っていることが読み取れます。
アメリカやユーロエリアの保険・年金準備金の割合も日本より高く、老後の生活のために、お金の備えをしっかりと行っていることが分かります。
貯蓄から投資の時代へ
国際的に見ても、積極的に資産運用を行ってこなかった私たち日本人ですが、これからは「貯蓄から投資へ」の時代に突入します。
日本は、今まで、国の年金制度が充実しており、自分でお金を積極的に増やす資産運用を行わなくても、経済的に充実した老後の生活を送ることができました。
しかし、少子高齢化が進んだことにより、現在の若い世代の方々は、国の年金だけではなく、自分自身で老後資金を貯蓄しておく必要があります。
2019年には、「老後2000万円問題」が話題となりました。
これは、豊かな老後の生活を送るためには、国からもらえる年金のほかに、自分たちで2000万円の貯蓄を準備しておく必要がある、というものです。
2000万円の貯蓄は、そう簡単にできるものではありません。
ただお金を貯めるのではなく、上手に資産運用を行い、お金を増やしていくことがポイントとなります。
「損をするのが怖い」「証券会社で投資をする手続きが面倒」など、今までなかなか資産運用にチャレンジすることができなかった方々は、老後のマネープランを立て、預貯金だけではなく、資産運用を行うことを検討してみましょう。
資産運用のメリット
では、実際に、株や投資信託などで資産運用を行うと、どのようなメリットがあるのか確認します。
<資産運用のメリット>
- 複利の効果により、預貯金よりも、効率的にお金を増やせる可能性がある。
- 自分で働かずに収入・利益を得ることができる(不労所得)。
資産運用の最大のメリットは、低金利な預貯金よりも、お金を増やすことができる可能性がある点です。
若いうちから資産運用を始めて長期投資を行うと、お金を効率的に増やすことが可能です。
例えば、毎月5万円を20年間年率3%で複利積立運用したとすると、投資総額は1200万円ですが、運用後は1600万円以上となります。
20年間、何もしなくても、400万円以上お金が増える可能性があるのです。
もちろん、資産運用では、世界の経済状況により、大きく損失を出してしまう可能性があります。
例えば、2008年におきたリーマンショックでは、株や投資信託などにおる資産運用で、大きな損害を出した投資家も多いでしょう。
しかし、2021年現在では、2008年のリーマンショックが起きる前の経済水準をはるかに超えて、株価は回復しています。
もちろん、今後も必ず経済が成長するという保証はありませんが、長期的な視点で見ると、資産運用を行うことでお金を増やせる可能性は高く、預貯金でお金を保持しているよりも効率的と言えるでしょう。
資産運用の始め方
投資初心者の方が、初めて資産運用にチャレンジする場合、まずは「NISA」と呼ばれる非課税制度を利用するのがおススメです。
運用で得た利益にかかる税金が非課税となるため、効率的にお金を増やすことができます。
例えば、「つみたてNISA」を利用すると、年間40万円を上限とし、最高20年間、合計で800万円までが非課税で資産運用が可能です。
証券会社で口座開設する時に、NISAの申し込みを行いましょう。
また、初めて資産運用のために口座を開設する証券会社は、大手のネット証券の中から検討すると良いでしょう。
例えば、SBI証券や楽天証券などのネット証券は、取り扱っている商品数も多く、投資初心者の方にも分かりやすい仕組みとなっています。
取引手数料は、投資家と証券会社の営業員が対面式で面接を行うような証券会社と比較すると、ネット証券は最低水準に抑えられているので、安心です。
会社からもらったお給与がそのまま銀行口座にある方の場合、わざわざ運用を行うのが面倒だと感じる方もいれません。
しかし、資産運用の場合でも、毎日毎日、保有商品の基準価格をチェックしなければいけない、ということはありません。
最初にしっかりと商品選びを行えば、毎月投資する積立投資を自動で行ったり、商品を長期間保有し続けながら、ゆっくり値上がりするのを待つこともできます。
まずは、証券会社で口座を開設するところから、始めてみましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
現在、家庭のお金をすべて普通預金や現金で保管している場合、資産運用を行ってお金を増やすチャンスを見逃してしまっている可能性があります。
初めて資産運用を行う場合は、税金の知識や経済用語などに戸惑ってしまう方もいるかもしれませんが、現在は、「貯蓄から投資へ」の流れに乗り、投資初心者向けの分かりやすい商品解説やネット証券が増えてきています。
家庭のお金を増やして、より豊かな老後の生活を送るために、資産運用にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
<参考>
(*1)金融広報中央委員会 1世帯当たりの金融資産保有額 令和元年